あらすじ
ソファはしょぼい。PCは異常。所長は人間に弱い。
古い雑居ビルの三階にある、小さな「香川興信所」。
くたびれたソファに、最低限の応接。
なのに、PCとネットワーク機器だけは異常なほど本気だった。
所長・香川直人、二十九歳。元ITエンジニア。
雑談は苦手。人付き合いにも弱い。
ところが調査、データ、公開情報の話になると、突然別人のように喋り始める。
そんな香川興信所を訪れた宮原千尋の依頼は、
「内部通報後に姿を消した元同僚・相沢理沙を探してほしい」
SNS、公開情報、過去ログ。
消えた痕跡と、残っていた記録。
直人はデータから事実を拾う。
千尋は、人の言葉や沈黙、記憶の中に残った違和感を拾う。
二人が調べていくうちに見えてきたのは、内部通報より前から始まっていた異変だった。
けれど、調べられるからといって、どこまで調べてもいいわけではない。
見つけた情報を、すべて依頼人へ渡していいとも限らない。
見えることと、勝手に掘ることは違う。
見つけられることと、居場所を教えていいことも違う。
公開情報と人間の記憶から事実を追う、現代IT/OSINT探偵もの。
そして調査の隣では、人付き合いに弱い所長と、有能な元人事女性の距離も、ほんの少しずつ変わっていく。
――調査結果は以上です。