あらすじ
大学三年生の俺には、友達がいない。
女性から好意を向けられたこともなければ、まともに話しかけられることすらほとんどない。
それで困ることもなかった。
現実で一人でも、ネットなら普通に誰かと話せる。
顔さえ見られなければ、俺だって普通の人間でいられた。
そんなある朝、いつも通り大学へ行くと、なぜか女性たちから視線を向けられる。
同じ大学に二年以上通っていて、一度も話したことのない女子が隣に座り、連絡先を聞いてくる。
知らない女性と何度も目が合う。
コンビニの女性店員まで、俺を前にして妙に緊張している。
何かがおかしい。
帰宅した俺は、いつもの匿名掲示板を開いた。
『好きな男に連絡先聞きたいんだけど、引かれる?』
『男が夜中に一人で出歩くのって危機感なさすぎない?』
『男子大学生にいきなり可愛いって言うのはセクハラ?』
そこでようやく気づく。
俺が変わったわけじゃない。
貞操観念も、美醜の基準も、昨日までとはまるで違う。
変わってしまった世界で、なぜか俺だけが昨日までの常識を覚えていた。