あらすじ
翠蓮(すいれん)の国で唯一、三途の川のほとりに店を構える食堂『彼岸庵』。
看板娘の鈴花(りんか)は、生まれつき死者の声が聞こえる体質。亡くなった人々は未練を抱えたまま店に迷い込み、最後の食事を所望する。
「死ぬ前に、あの味がもう一度」
ある夜、店に現れたのは宮廷で毒殺されたはずの皇太子・蒼牙(そうが)本人。しかも自分が死んだことに気づいていない。鈴花はとっさに彼を「住み込みの見習い」として雇い、正体を隠したまま一緒に店を切り盛りすることに。
死んだはずの皇太子は、なぜか料理の腕だけは一流。生者と死者の狭間で営まれる食堂は、未練、嘘、涙、そしてとんでもない勘違いに満ちていて——。
「あのな鈴花、客がみんな透けて見えるんだが」
「気のせいです。さ、お冷をどうぞ」
これは、黄泉の入口で繰り広げられる、ちょっと切なくて、ひどく可笑しい、死者のための満腹物語。