あらすじ
死者には、この世に残した「未練」がある。
そして俺には、それが黒い糸として見える。
糸を切れば、死者は消える。
だから俺は、誰にも知られず、死者の未練を終わらせる仕事をしていた。
――あの日までは。
「息子が、毎晩帰ってくるんです」
ある夜、ひとりの母親から依頼を受けた。
三日前に交通事故で死んだはずの息子が、毎晩、自分の部屋へ帰ってくるという。
俺はいつも通り、その未練を切った。
だが、その夜。
窓の外に立つ男が、一本の指を掲げた。
『一人目』
直後、知らない少女から電話がかかってくる。
『あなた、私のこと見えてるよね?』
少女の名前は、朝倉美月。
十年前、俺の父親と同じ日に死んだ少女だった。
そして彼女は、俺にこう告げる。
『もうすぐ、お父さんを迎えに行くから』
死者の未練を終わらせるだけだった俺の日常は、その日を境に壊れ