あらすじ
安月給に嫌気が差した俺は、社長に頼み込んだ。
「給料、上げてくださいよ」
すると社長は、あっさり言った。
「よし。毎月三十万やろう」
夢みたいな話だった。
いや、夢だったらよかった。
気がつけば、給与明細には見覚えのない数字が並んでいた。
貸付金残高、六百万円。
三十万円は昇給じゃない。
全部、前借りだったらしい。
辞めようとすれば、社長は笑う。
「辞める? いいんじゃない。金返してからな?」
借金を返すため、俺は妙な仕事を次々と押しつけられることになる。
嫌がらせ代行。
意味の分からない雑用。
どう考えても怪しい仕事。
そしてついには、
「海へ行け」
漁師か。
蟹工船か。
マグロ漁船か。
覚悟を決めた俺を待っていたのは――
シャチだった。
しかも、俺の言うことだけ聞かない。
魚は取る。
バケツまで取る。
呼んでも来ない。
なのに、ときどき笑っているように見える。
借金六百万円。
人生はたぶん、終わりかけていた。
それなのに俺は今、シャチに腹を見せてぺんぺんされながら、客席の笑い声を聞いている。