あらすじ
下働きの侍女・紅玉は、身に覚えのない盗みの罪を着せられ、後宮の刑場で首を落とされる寸前だった。「まあ、こんな人生でも、そこそこ楽しかったから悔いはないか」――惜しくないわけではないが、幼い頃から使い走りと折檻に明け暮れた毎日を思えば、いっそ楽になれるとさえ思っていた。
ところが処刑の直前、彼女の顔を見た内侍府の総管が絶句する。「……鈴蘭妃さま?」
五年前、後宮の湖で消えたまま骨も上がらなかった伝説の寵妃「幽妃」に、瓜二つだというのだ。
かくして紅玉は、政争の道具として「死んだはずの妃の生還」を演じることに。冷ややかな禁軍統領・玄霜に見張られながら、慣れない絹の衣に身を包み、優雅な微笑みの練習をする紅玉。だが、染みついた下働きの気質は、そう簡単には抜けなくて――。
倹約の知恵も、力仕事で鍛えた図太さも、後宮の人々の目には「さすが幽妃さま、只者ではない」と映ってしまうようで?
生きるためについた嘘が、いつしか後宮中を揺るがす伝説になっていく――成り上がり×勘違いファンタジー、開幕。