あらすじ
借金で傾いた実家の工房を救うため、名門硝子工房の長ヴァフタングと政略結婚した職人ツィアラ。夫婦らしい振る舞いはしないと宣言し、屋敷でも彼を「工房長」と呼んで働いている。火傷をすれば手袋が届き、夜食と仮眠時間まで用意されるのは、少々厚すぎる福利厚生――のはずだった。
そんな折、隣領から届いたのは、仕事と住居と結婚相手をまとめて提示する引き抜き状。夫も退職の支度を整えていると思い、去る決意を告げた途端、無表情だった工房長の顔が崩れる。
けれど今は大作の仕上げ中。吹き竿は止められない。硝子を回し、型へ収め、徐冷窯まで運びながら、夫婦が嫉妬も涙も本心も盛大にさらしてしまう、すれ違い職人婚のお話。