あらすじ
王都の政争に敗れた家の生き残り、レオン・ハルベルク。
彼に与えられたのは、名誉ある男爵位と北辺グレイフェン領だった。しかし、それは褒賞などではない。人口はわずか百九十三人。畑は荒れ、水路は埋まり、共同倉の食糧は六十日分しか残されていなかった。
領民から向けられるのは、歓迎ではなく疑いの目。
それでもレオンは宣言する。
「なら、凍死しない領地にする」
春までの年貢停止、食糧在庫の公開、融雪水を引く水路の再建、試験農法の導入。レオンは奇跡や強大な魔法に頼らず、記録と話し合い、小さな改善を積み重ねていく。
やがて領地には石工や難民、元盗賊、森の民が集まり、寒村は交易と技術の拠点へ成長する。しかし、発展は新たな危機も呼び込んだ。疫病、悪徳商人、銀山による水質汚染、王都の徴税官、そして王国を二分する内乱。
守るべきものは、領主の地位か、家名の誇りか。それとも、人々が自分たちで築いた暮らしなのか。
追放された若き領主と領民たちが、水路を掘り、麦を育て、制度を築き、やがて一つの自治領を生み出す。
これは領地を「所有する」物語ではない。
誰もが明日を選べる場所を、皆で作る物語である。