あらすじ
「……めんどくさいな」
山奥で師匠と二人で暮らしてきた十八歳の少年、アルト。
幼い頃から師匠に剣を教え込まれ、狩りや野営にも慣れている。
しかし――世間のことは何も知らない。
お金の使い方も知らない。
宿というものも知らない。
酒場も知らない。
そもそも、冒険者が何をする仕事なのかすら、よく分かっていない。
そんなある日、師匠はアルトに告げる。
「もう、お前に教えることはない。山を下りて、世界を見てこい」
「……何しに?」
「人に会え。いろんなものを見ろ」
「……めんどくさい」
こうしてアルトは、渋々ながら初めて山を下りることになる。
町へ着いたアルトが出会ったのは、冒険者に憧れる少女――エレナ。
風魔法を使う彼女に連れられ、アルトは冒険者ギルドへ向かう。
そして登録されたアルトの職業は――『剣士』。
魔法が当たり前の世界では、剣士は時代遅れ。
「魔法も使えないのに冒険者なんて無理だろ」
そんな言葉を向けられても、アルトは特に気にしない。
なぜなら本人は、本気で自分を「弱い」と思っているから。
基準となる相手が、あまりにも強すぎる師匠だったことを知らないまま。
「めんどくさい」と言いながらも、困っている人を放っておけないアルト。
そんな彼の周りには、少しずつ仲間が集まっていく。
冒険者として依頼をこなし、
知らない町を旅し、
魔物と戦い、
時には失敗し、
仲間と笑い合う。
一人で生きてきた少年は、旅の中で少しずつ「誰かと一緒にいること」の意味を知っていく。
これは、世界を救う使命も、大きな野望も持たない少年が、
仲間と出会い、旅をし、様々な経験を重ねながら成長していく物語。
――ただし。
本人だけは、まだ知らない。
自分が「弱い」と思い込んでいるその力が、
この世界の常識から大きく外れていることを。