あらすじ
紫燕国(しえんこく)後宮、最下級女官・紅蘭(こうらん)の仕事は「毒見」。皇后陛下より先に膳を口にし、無事なら下がる――それだけの、地味で、しかし一歩間違えば命を落とす役目である。幼い頃に薬草園で毒に慣らされた特異体質のおかげで、紅蘭はこの仕事を六年間、誰よりも生き延びてきた。
だがある夜の宴で事件は起きる。皇后・翠玲(すいれい)の杯に仕込まれた毒に、紅蘭は気づくのが一瞬遅れた。とっさに杯を奪って自ら呷り、意識を失う。目覚めた時には見知らぬ寝所――しかも、なぜか自分が「皇后」として布団に寝かされていたのだ。
聞けば、毒を盛られた皇后は生死の境をさまよい、政敵に弱みを握られぬよう存在を伏せられることに。身代わりに選ばれたのは、顔立ちが似ており、かつ「誰も本気で顔を見ていない」下級女官の紅蘭だった。
「――正直、皇后のふりより、毒を盛った犯人を捜すほうが得意なんですが。」
戸惑う間もなく玉座の妃として振る舞う羽目になった紅蘭。持ち前の観察眼と毒の知識を武器に、宮廷の裏で蠢く陰謀を暴きながら、皇帝の懐刀・宰相「青嗣(せいし)」の疑いの目もかいくぐらねばならない。バレれば不敬罪、放っておけば毒殺未遂は迷宮入り。果たして紅蘭は、この頭の痛い「配役」を生き延びられるのか――。