あらすじ
人口減少と高齢化が進んだ近未来。
医療、交通、物流、治安――人々の生活は、天才科学者ザイン・ヴェルナーが築いた巨大技術基盤《AXIOM》と、そのアンドロイドたちによって支えられていた。
AXIOMは人を救う。
だからこそ、その力は簡単には否定できない。
一方で、社会を維持するための判断権は少しずつザイン個人へ集中していた。
そんな世界で、20歳のユウ・タカセは、独立救助・防衛組織《SIDERA》の一員として働いている。
ユウの特技は、人を見ること。
相手の癖、呼吸、動き、感情の変化を捉え、他者の干渉現象と自分を同期させる《RESONANCE》によって仲間の力を引き出す。
誰かを助けることには迷わない。
けれど、自分が何を望んでいるのかを問われると、うまく答えられない。
かつてユウには、カイとレイナという二人の幼馴染がいた。
三人で笑っていた時間は、今ではもう戻らない。
物語は、三つの思想を持つ勢力の衝突から加速していく。
社会の秩序と安全を守るため、判断を一つへ集約していく《AXIOM》。
人間の欲望、矛盾、怒り、自己破壊さえも肯定し、世界へ混乱を広げる《ERIS》。
そして、誰か一人に「正解」を委ねず、人間自身が選択する余地を守ろうとする《SIDERA》。
さらにAXIOMからの完全な政治的独立を求める七都市連合の蜂起によって、均衡は崩れ始める。
この世界では、人間の神経活動が物質・エネルギー・情報などへ作用する《干渉現象》が存在する。
強大な力を使うほど神経には《NP》と呼ばれる負荷が蓄積し、限界を越えれば肉体や人格そのものさえ壊れていく。
自分の身体を燃料にして戦う者。
他人の負荷を引き受ける者。
未来を読むように相手を分析する者。
そして、他者と同期することで戦うユウ。
能力そのものが、それぞれの生き方と切り離せない世界である。
そして、世界規模の争いだったはずの戦争は、ユウ自身が失った過去へ接続する。
これは、「正しい世界」を作ろうとする者たちと、
間違いながら、それでも自分で選び続けようとする人間たちの物語。
救うことは、相手の人生を決めることなのか。
理解することは、相手を所有することなのか。
間違える可能性を残すことは、欠陥なのか、それとも自由なのか。
『ERRATA』――
完成することのない人間たちが、自分自身を何度でも訂正しながら生きていく、近未来SF群像バトル。