あらすじ
賃貸住宅の一室に、住人の知らない古いタンスが突然現れた。侵入の痕跡はなく、防犯カメラにも運び込まれた様子はない。しかも調査の結果、そのタンスはかつて同じ部屋に置かれていた物だと判明する。
神格史料調査局に所属する神格鑑定士・狭霧春華は、県警異能対応課の捜査官・葛城琴音とともに事件の調査を開始する。
仏壇、柱時計、テント――。
各地で物が「かつて存在した場所」へ戻される奇妙な現象が相次ぎ、やがて人間までもが、本来なら辿り着けないはずの場所から自宅へと帰還する。
その背後に浮かび上がったのは、山中に残された古い社と、人や物を“帰す”名もなき神。
「どこに帰りたい?」
そう問いかけ、帰るための道を開く神は、迷った者たちを何度も救ってきた。しかし今、その力は不安定になりつつあった。
人を帰すことのできる神が、ただ一つ分からないもの。
それは――自分自身の帰る場所。
春華は式神・四季羽の「目的地を見失わない」力と、自らの神格感応を頼りに、名もなき神の鑑定へ挑む。
帰る場所とは何なのか。
心の奥にある場所は、本当に「今、帰りたい場所」なのか。
これはとある女性神格鑑定士と、自分の帰る場所を知らない神の物語。