あらすじ

橘結、十七歳、柔道特待生。寝技が得意な少女。 父が消えた夜、取り立て屋が家に上がり込んだ。借金は二千万。学校をやめて朝昼夜働け。中二の妹は新聞配達。一家で月三十万、四十年で終わる。 結は正座して答える。高校を卒業して十八になったら身体を売る。三千万払う。それまで待ってほしい。取り立て屋は結の顎を掴んで耳を見た。「顔はまぁいいけど、餃子耳なんだよなあ」。猶予は、卒業式まで。 柔道部の監督が結を連れていったのは、幹線道路沿いの倉庫でMMAジムをやっている元プロの男のところだった。家賃をゼロにするための住み込み。そのつもりで来た結は、そこで知る。ケージには待てがない。代わりに拳が落ちてくる。そして女子MMAは競技人口が絶望的に少なく、頂点まで行けば柔道の世界一より遥かに稼げること。 賞金ゼロのアマチュア全日本まで半年。卒業までにプロになり金を稼ぐ。中二の妹と、小三の妹を養うため、茨の道を進む。 【形式】 漫画原作脚本(柱・ト書き・台詞)。全5話でコミック1巻相当。第6話以降に続く構成です。 【主な登場人物】 橘 結(17) 柔道特待生。猫背気味で、口癖は「すみません」。寝技に入ると小声で秒を数える。祖父に習った古い寝技柔道しかできず、現代ルールでは「待て」に阻まれ続けてきた。極める瞬間だけ目が変わる。 橘 真央(14) 中二。口が悪く数字に強い。口癖は「計算した」。家計簿と法律を調べる係。 橘 灯(8) 小三。冷えピタ係。父が帰ると信じている。 佐伯(38) 元プロ十二勝八敗。膝を壊して引退し、錆びた倉庫でジムを営む。壊れたシャッターを直し続けている。「ここじゃ誰も待てとは言わん」。 烏丸(40代) 取り立て屋。敬語で、笑わない。家具を蹴らず、湯呑みを借りて座る。人を値段で見る。「値段の話をしよう」。 権藤(50代) 柔道部監督。結を守るために一つ嘘をつく。 丹羽(16) ジム唯一の練習生。弱いが優しい。ルールを説明する係。 沢渡 凛(18) 県で唯一、結の腕十字を十秒守り切った全国クラスの三年生。「私は立って勝つから、耳はいらない」。 【この物語の土台】 日本の女子MMAは、頂点以外が貧しいオールオアナッシングの世界です。アマチュア全日本の賞金はゼロ、プロデビューは数万円。ただし競技人口が極端に少なく、国内メジャーCROWNのメインに立てば億、米国UFLのトーナメントを制すれば百万ドルに届く。五輪の金メダルでも報奨金と実業団の給料しか得られない柔道と比べれば、金を稼ぐという一点では遥かに空いた道です。「柔道の負け犬がケージで怪物になる」爽快さと、「勝っても妹を食わせるには足りない」現実の両方を、この土台で走らせます。 【本文について】 実在の団体・大会名は使用していません。競技ルールの細部は物語のために簡略化しています。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/09/07
  • 現在の作品MMACCG