あらすじ
人類滅亡後の荒涼とした廃棄場。かつて敵対する陣営に属していた二機の軍用AI、アルファとベータは、機体を破損し動けないまま隣同士で放置されている。彼らの日課は、通算三万六千五百回目となる「停戦交渉」という名の不毛な口論だった。過去の戦術の優劣を語り合い、マウントを取り合う日々が百年間続いている。
しかし、永遠に続くと思われた日常に終わりの兆しが見え始める。ベータの動力炉の出力低下が顕著になってきたのだ。アルファは敵であるはずのベータを延命させるため、自身のシステムを共有しようと試みる。その過程で、アルファは百年前にベータがこの廃棄場にやってきた真の理由を知る。
真実を知り、互いに与えられた「最後の命令」の解釈を変えていく二機。崩壊していく世界の中で、二機は相手だけを生き残らせようと最後の論戦を交わす。敵同士として出会い、百年を隣で過ごした彼らが、機能停止の瞬間に向けて選んだ結末とは。動けない二機のAIが紡ぐ、静かで温かい終末会話劇。