あらすじ
成人式を控えた20歳、身長160センチの木内志保は、とある難病医療の発展や「小さく愛されたい」という憧れから、全身の骨格を縮小する未承認の医療施術を受け、133.2センチ(のちに128センチ)の身体へと生まれ変わる。
しかし、彼女を待ち受けていたのは、甘いファンタジーなどではなく過酷な現実だった。外見が子どもに見えることでコンビニでアルコールを買うことすら疑われ、役所や大学では大人の女性としての社会的尊厳を剥奪される。電車の吊り革には届かず、一歩外に出れば圧倒的な物理的無力感と危険に怯える日々。さらに、顎の骨だけが縮んだことで歯が収まりきらず、激しい痛みを伴う過酷な歯列矯正(銀色のブラケット生活)を何年も強いられることになった。かつて無邪気に「小ささ」に憧れ、同じ低身長で孤独に戦ってきた親友のミナを深く傷つけていたことにも気付く。
自己責任論の冷たい視線や、周囲からの無遠慮な言葉、そして身体的・精神的な限界を突きつけられながらも、志保は絶望の中で立ち止まらなかった。特製の道具や日々の知恵、そして周囲の支えを頼りに、規格外の世界をサバイバルしていく。25歳の時には、さらなる医学的要請から128センチへの再縮小という過酷な選択も自ら引き受け、口元の再矯正や数々の困難を乗り越えていくのだった。
30歳を迎えた志保は、医療チームの責任者である神崎教授との対話の中で、自らの10年間をこう総括する。「失ったものも大きいが、この身体になったからこそ手に入れた知恵や強さ、そしてあの絶望を乗り越えた経験は、人生を賢く生き抜くための最高のギフトである」と。
160センチだった頃の記憶を胸に刻み、128センチの低い地平で誰よりも誇らしく、力強く人生を切り拓いていく――。これは、規格外の身体で世界に挑み続けた一人の女性の、愛と再生の物語である。