あらすじ
コンピューターの高速化、微細化、AIの登場。進化し続けるサイバー空間において、ひとつの特異な時代があった―2000年代後半、コンピューターは既に社会に浸透していた一方、世間は映画に登場するような魔術的な「天才ハッカー」を恐れつつも、現実のセキュリティ対策は疎かなままになっていた。そんな時代の裏側をハッカーたちは生身の人間としてどのように生き、何を思ったのか。成長した彼らは、やがて時代を動かす隠された科学技術の真理を目撃する。
英題:The Invisible Hands of Prometheus
作中の技術、医学描写は現実とは異なる部分があります。
これは「カドコミ漫画原作コンテスト【ナツガタリ'26】」の応募作品です。冒頭5話しかありませんが、後の展開を想像しながら読んでもらえると嬉しいです。
以下に作中の設定などを紹介します。脚本そのものを楽しみたい方は無視しても構いません。物語を楽しむにあたって必要な設定は脚本中にも書かれています。
* キャラクター
照(てる。ネット上ではボブ [bob])
中学1年生程度の男子。背が低く、ミカと比べると幼く見える。ミカと一緒にハッキングをするようになる。ハッキングの知識は少ないが、コンピューターの知識や、技術文書をかろうじて読める英語力がある。勉強は進んですることはないが、分からないことがあると気が済まない性格を両親から受け継いる。人に流されがちだが、自分で判断する能力はある。(照の設定は今後の成長のことを考慮しています。また、真面目な言動が多いので、最初のうちは幼さが描写に柔らかさをもたらしてくれれば良いなと思っています。)
ミカ(ネット上ではアリス [alice])
中学2年程度の女子。背が高く、女性らしさもあって、照と比べると大人びて見える。ただ、大人から見るとそこまで背が高いわけでもなく、また自身は見た目に頓着していないので、いつも髪はボサボサ。ハッカーだが考えるときは紙と鉛筆を使う。伸びた髪を鉛筆をかんざし代わりにしてまとめている。ハッキングの知識は「広く浅く」が持ち味で、様々な能力を持つ他人と協力して攻撃を実現する。精神的には自立しており、リーダシップがある一方、感情的な豊かさを併せ持つ。親がいない。
照の両親
医学系の研究者。照が幼い頃に消息を絶つ。分からないことがあると気が済まない性格。
真維(まい)
照の両親の同僚の女性。照と照の両親に「まいちゃん」と呼ばれる。照の両親がいなくなるときに、照の子育てを任される。照に対してやや過保護。研究者として確固とした意見を持つ。
照の友人
照の同級生。照より背が高いが、言動は幼く見える。照とゲームの攻略法を共有している。
喫茶店のマスター
若い男性。親戚の間を転々としていたミカを引き取る。実家は裕福で、困難な状況にある子どもたちをかくまうが、放任主義でもある。客商売なのに大人に対し人見知りする。店が繁盛しているかもあまり気にしていない。
喫茶店の猫
ミカは「姉さん」、マスターは「お姉ちゃん」と呼ぶ。元野良猫。老猫だが、浮かび上がるように軽々とテーブルに飛び乗る姿は優雅ですらある。外面はいいが身内に厳しい、本物の猫かぶり。周りの人間には言葉が分かると思って話しかけられているが、本当は観察から来た鋭い洞察でカバーしている。子どもたちには厳しいが気にかけている。店のことも自分の縄張りとして責任感を持って看板娘を務めている。マスターとは対照的な性格。
ハル [hal]
海外の大学の事務員の女性。ミカのハッカー仲間。ハルはネット上の名前で、本名は別にある。やや過干渉な親を持つ。普段はおとなしいが、ハッキングしているときは積極的な性格になる。おっちょこちょいなのを気にしているが、サボりのカモフラージュになっており、またそれをカバーするためにハッキングにおいては厳格な検証をする習慣が身についている。
ハルの上司
普通に仕事をこなしている。ハルがサボっていることに気づかない。
シバ [shiba]
ミカに違法な捜査をさせている悪徳警官。犬扱いされている。
* 場所
照の家
照と真維が住む。照の部屋は個室。
喫茶店
マスターとミカが住む。2階建て。1階は店舗。客はあまり多くないが、マスターのコーヒーと猫目当てのファンがいる。2階にクラスターがある部屋と、マスターと女子たち(ミカと猫)の部屋がある。クラスターは稼働するとうるさく、1階にも響くが会話には差し支えない程度。猫はもともとクラスター部屋を自分の部屋にしていたので、部屋をクラスターに取られて怒っている。
照とミカが通う学校
中高一貫校。
ハルの大学
外国にある。タイムゾーンは太平洋標準時(PST, UTC-8)。
* 時代
技術描写のために具体的な年を設定しています。
作中の主な舞台:2005年冬
照の両親が失踪したとき:1997年冬
* 作中の用語
照のCD
両親が失踪するときに照に託した。暗号化されている(パスワードがかかっている)が、その暗号は作中の時代には既に旧式化している。スキミング事件の捜査と並行して解読が行われる。
大規模スキミング事件
犯罪組織による進行中の大規模なスキミング事件。照のCDの解読と並行して捜査が行われる。
とある病気
致命的な神経変性疾患。医学界でも分かっていないことが多い。数年から数十年程度の、幅がある、長い潜伏期間の後に発症。発症すると認知症、記憶喪失、言語障害、運動障害が出て、合併症か呼吸不全により死亡する。発症からの余命もばらつきがあるが、平均は1年。あるタンパク質が原因とする説が有力。
* 作中で重要な技術用語
ハッキング
コンピューターをやや特殊な方法で使うことで、通常不可能な目標を達成すること。転じて、不正アクセスをすること。この物語ではもっぱらこの意味で用いる。また、文化的な側面をハッカー文化などと表現したりする。
スキミング
キャッシュカードを不正に読み取ること。現代では対策されている。
スキマー
キャッシュカードを不正に読み取る装置。ATMのキャッシュカード読み取り口に設置されるため、小型である必要があり、2000年代には作成に高度な技術が必要だった。
磁気カード
スキミングに対して脆弱なカード。2000年代までは多く見られたが、現代ではスキミングに耐性があるICカードに多くの場合で取って代わられている。
クラスター
複数のコンピューターをネットワークで統合したもの。遅いが安価なコンピューターを多数組み合わせることで、安価に大きな計算力を得ることができる。
* 物語の理解に必要ない技術用語
視覚資料のため、技術的整合性のため、あるいは雰囲気を出すためだけに使われている用語。
コード
プログラムの文字表現。プログラムについてキャラクターが考えてたり、コンピューターが実行していたりするときに浮かび上がる。
CD
1990年代においては大容量を誇っていた。書き換えに制限がある。劇中では、多くの研究データを持ち出すことを可能にしている反面、旧式の暗号が固定されて後に解読される要因の一つとなっている。
メインフレーム
複数人で共有する業務用の大型コンピューター。1980年代ごろまでは多く用いられていた。
ワークステーション
業務用の、1人で操作するコンピューター。特に1990年代においては、パソコンよりはるかに高性能で、またデザインも独特なものがあった。
パソコン
個人用のコンピューター。ワークステーションと対比される。
マイコン
物語中ではマイクロコントローラーの意味。スキマーに使えるような小型のコンピューター。
脆弱性
ハッキングに悪用される欠陥。
ターミナル
文字ベースのユーザーインターフェース。技術者がコンピューターを操作する場面で印象的。
チャンネル
チャットルームとも。
アリスとボブ
暗号通信の方式を説明するときに使う、通信者の仮の名前。
シェルコード
標的のコンピューターで動くプログラム。侵入の仕方に合わせた、特別なプログラミングを要する。
バイオインフォマティクス
遺伝子やタンパク質をコンピューターを使って解析する研究分野。
遺伝子配列
遺伝子を構成する塩基(DNAならA、T、G、C)の配列。ぱっと見では意味がわからないので、研究者たちが解読を続けている。
プロローグとエピローグ
プログラムを再利用可能な形にするときに現れるパターン。
開始コドンと終了コドン
オープンリーディングフレームに現れるパターン。
オープンリーディングフレーム
タンパク質を表す遺伝子の範囲。
ブレッドボード
はんだ付けが不要な、組み換えができる基板。
ICクリップ
ICチップに接続する治具。
ROM
書き換えできない記憶媒体。マイコンの、書き換えが不要なプログラムなどを記録する。
中間者攻撃(マン・イン・ザ・ミドル・アタック)
攻撃者が標的の通信に割り込む攻撃の分類。
* タイムゾーン
参考までに、タイムゾーンの対応を以下に示します。例えば、日本における9時はハルの大学では16時です。
日本標準時(JST, UTC+9) 9→15→21→3→9
太平洋標準時(PST, UTC-8)16→22→4→10→16
協定世界時(UTC)0→6→12→18→0
* 構文
A「B」:Aという人物が「B」と発言するセリフ。
A(B):Aという人物が「B」と心の中で言うセリフ。
(B):人物描写に結びつかないセリフ、あるいはナレーション。
※A:読者にとっては不必要な、視覚的な描写や設定上のヒント。脚本そのものを楽しみたい方は無視して自由に想像して楽しんでほしいと思います。