あらすじ
君と、私の余白。
「来年の夏も、また一緒にここ来ような」
そう言って笑った君の顔を、私は今でも覚えている。
高校二年生の夏。
桜井美月には、二年間付き合っている恋人・朝倉湊がいる。
幼い頃からずっと一緒だった二人にとって、放課後に並んで歩くことも、くだらないことで笑うことも、帰り道に「また明日」と手を振ることも、当たり前の日常だった。
ずっと続くと思っていた。
何年経っても、隣にいると思っていた。
――あの日までは。
それから少しだけ、世界が変わった。
見慣れた景色なのに、どこか懐かしい。
知っているはずの場所なのに、何かが足りない。
湊も時々、何かを思い出そうとするように空を見上げる。
「なぁ、美月」
「ん?」
「俺たちって……いつから一緒にいたっけ?」
「……ずっと前からでしょ」
そう答えると、湊はなぜか寂しそうに笑った。
二人には、まだ一緒にいられる時間がある。
笑って、泣いて、喧嘩して。
いつも通りの毎日を過ごす。
ただひとつだけ。
その時間には、誰にも知られていない秘密があった。
これは、
終わってしまったはずの恋に残された、ほんの少しの時間。
そして、
君と私の間に残された、最後の「余白」の物語。