あらすじ

二十歳で社会人になって以来、給料を貯め、痛みに耐えて3年8か月かけて美しい歯並びを手に入れた須藤結衣。ついに来週、長年の矯正装置をすべて外せるというその前日、未曾有の大地震が街を襲う。住む家を失い、着の身着のままで避難所へと逃げ込んだ結衣の手元に残ったのは、小さな「矯正用保護ワックス」のケースだけだった。 避難所での生活は過酷を極めた。硬い乾パンを噛むこともままならず、何より「装置を外したくても、直せる歯医者もリテーナーを作る設備もない」という絶望的な現実が結衣の歯を縛り続ける。同じく矯正中の友人・小林葵の姿に我が身を重ねて胸を痛め、妹・麻衣の優しさに複雑な葛藤を抱えながらも、結衣はいつ終わりとも知れない避難生活を耐え抜いた。 仮設住宅へ移り、長い月日を経て訪れたのは、被災地の仮設診療所と移動診療車での治療再開の機会だった。そして発災から8か月目、ついに矯正専門医の手によって金属のブラケットとワイヤーが取り払われる。 鏡に映したのは、白く輝く、隙間なく整った自分の歯並び。マスクの下でこわばっていた口元は自然な笑顔を湛え、支え合ってきた妹や葵と共に、止まっていた時間を超えて新しい日々へと歩き出す――理不尽な試練の中でもがき、笑い、再び前を向いて生きる女性たちの姿を描いた、感動の再生の物語。

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エブリスタ2026/09/06
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