あらすじ
白銀の髪をした青年は、イルヴァを見るなりその身体を抱き上げ、信じられないものを見るように呟いた。
「……姉上?」
――そんなはずはない。彼とは、初対面なのに。
***
イルヴァ・カーラソンは、辺境の子爵領で家族と穏やかに暮らしていた十一歳の少女。
そんな彼女のもとへ、ある日、竜王ラクナルから一通の召喚状が届く。
その内容は、二人の竜の王子の花嫁候補として王城へ来るように、というものだった。
各国から年頃の姫君や高位貴族の令嬢たちが集められる中、まだ結婚には幼すぎるイルヴァだけが、なぜか竜王本人から名指しされていた。
そして王城へ到着した彼女を待っていたのは、さらに不可解な出来事だった。
白竜である第二王子シグルドは、初対面のイルヴァを「姉上」と呼び、早々に将来の伴侶にしたいと宣言。
一方、黒竜である第一王子ギルザードは、彼女を見た瞬間に息を呑みながらも、なぜか距離を置こうとする。
けれどイルヴァが危険にさらされれば、誰よりも早く手を差し伸べるのは彼だった。
知らないはずなのに、なぜか懐かしい二頭の竜。
繰り返し夢に現れる、遠い記憶のような光景。
そして、イルヴァ自身も知らない出生と前世の秘密。
かつて叶わなかった想いと失われた絆が、時を越えてもう一度動き始める――。