あらすじ
虐げられて育った伯爵令嬢・シエラは、“屍人公爵”と恐れられるテオドア・ミューゼルのもとへ嫁ぐことになる。
魔術師であるテオドアは、痩せ細り、生気のない顔をしていた。
人を寄せ付けない彼は、結婚初夜からシエラに「夫婦らしい関係を求めるつもりはない」と告げる。
結婚して半年。テオドアが重度の不眠症だと気付いたその時――シエラは前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、どんな不眠客も寝落ちへ導く――“神の手”と呼ばれたヘッドスパニストだった。
「私が、あなたを寝落ちさせてみせます」
半信半疑のテオドアに極上のヘッドスパを施すと、彼は生まれて初めて深い眠りへ。
そして眠れるようになったテオドアは、食事も摂れるようになり、やがて“屍人公爵”とは思えないほどの絶世の美男子へと変貌していく。
一方、シエラ自身も、テオドアや屋敷の人々に必要とされることで少しずつ自信を取り戻していく。
しかし、シエラの“神の手”には、ただ人を眠らせるだけではない秘密があった。
この世界では、魔力の多い者ほど強い魔術師となる一方、その代償として不眠・頭痛・食欲異常などの不調に苦しみやすい。
そしてシエラのヘッドスパは――知らず知らずのうちに、乱れた魔力の流れそのものを整えていた。
さらにテオドアにも、世間には知られていない秘密がある。
初歩的な魔術しか使えない“落ちこぼれ”と噂されている彼だが、実際には国を覆う大結界《清浄の天蓋》を陰ながら維持し続けている、桁外れの魔力を持つ魔術師だった。
眠れない公爵と、“神の手”を持つ令嬢。
互いに傷を抱えた二人が、眠りと癒やしを通して夫婦になり――やがてその力は、国を、そして世界を救うことになる。