あらすじ
【この作品はカドコミ漫画原作コンテスト「ナツガタリ26」応募脚本です】
「呪骸は単なる都市伝説――表世界ではそうですが、裏の世界では人の肉や忌物、時には呪骸そのものを好事家達が買い漁っている。どこまでも享楽を求める人間の、なんと悍ましいことか」
深い闇の底――。そこは、人の欲望に値札がつき、人間の未練や絶望から生まれた異形の怪物――呪骸――さえもが商品になる世界。
呪骸を狩る者、忌物(いみもの)を造る者、そしてそれらを商品化する者たちが蠢く裏社会で、〝清掃局〟の飼い犬として生きる少女がいた。
「姉様を絶対に人間に戻す……それまでわたしは絶対に死ねない」
ダボダボの赤いモッズコートを翻す少女・めぐる。
その武器は、二丁の対呪骸用機関拳銃と、己の寿命(ミライ)を代償とする禁忌の呪い「再演(リテイク)」。
「……タイムリミットまで時間がありませんから」
眼鏡を指で押し上げ、忌物を操る忌造師・レイ。
めぐるを支える一方、彼自身もまた、15年前に妹・紫苑(しおん)を攫った元凶を追っていた。
「…………」
黒いゴシックドレスを纏う、めぐるの姉・しずか。
呪骸へと成り果て、感情と言葉を失っても、妹を守る「姉」であることだけは変わらない。その身が壊れることすら厭わず、ただ黙って妹の前に立つ。
三人が生きるのは、呪骸を狩り、その報酬で今日を生き延びる、最悪な世界だった。
ある夜、三人は獲物を狩るため1つの罠をしかける。
舞台は、欲望にまみれた裏オークション。しずかを「最高級の呪骸」として出品する潜入作戦。
だが――。
「――10億――」
あり得ない高値をつけた落札者の正体は、人間の皮を被った呪骸だった。
しずかが喰われ、全てが終わろうとしたその瞬間、めぐるの胸で禍々しい呪いが光を放つ。
――凍てついた空間が砕け散り、時計の針が逆回転する――
めぐるは禁忌の力を解き放ち、不可能な逆転劇を演じてみせる。……たとえ、その代償が自らの命だとしても――。
危機を乗り越えためぐる。しかし、死闘を切り抜けた先で待っていたのは、更なる絶望だった。
呪骸駆除の最中に見つかった、「眼球と糸」を模した奇妙な紋章。
それはかつて、めぐるを呪い、姉を呪骸へと変えた全ての元凶――「人形遣い」へと繋がっていた。
レイ「素敵な招待状を頂いてしまいましたので」
めぐる「そんなレイが行くってんなら――わたしも一緒に行くさ」
過去に囚われた少女・めぐる。
妹を失った忌造師。レイ。
そして、呪骸になっても妹を守り続ける姉・しずか。
三人はそれぞれの過去を抱えたまま、「人形遣い」が待つ奈落へと足を踏み入れる。
これは――、
自らの命を削りながら、
まだ見ぬ未来を掴もうとする少女の物語。
――すべての幕は、もう上がっている。
人形遣い「ムフッ……さぁ、めぐる君。もっともっともぉーっと抗ってください。あなたの命が尽き、その果実が熟すまで――」
【登場人物】
■めぐる
小学生とも思える姿で、ダボダボの赤いモッズコートを着た少女。頭髪には白髪の束が混じり、常に三白眼で周囲を睨みつけている。
口が悪い本作の主人公。2年前に「人形遣い」によって姉を呪骸にされ、自身も呪いを受ける。時間を巻き戻す能力「再演(リテイク)」を使うたびに寿命が削られ、容姿が若返っていく。姉を人間に戻すために〝清掃局〟の掃除屋となっている。
■レイ
シックなスリーピーススーツに身を包み、縁なし眼鏡をかけた細身の青年。
慇懃無礼な態度でめぐるをサポートする忌造師。高級忌物を買い漁っては借金を増やし、めぐるからはポンコツ呼ばわりされている。ビジネスライクに振る舞うが、15年前に妹を攫われた過去を抱えている。
■しずか
黒いゴシックドレスとヴェールを纏う美女。めぐるの姉。
2年前、「人形遣い」によって「呪骸」にされ、感情と言葉を失った。普段は無言で無表情だが、めぐるが危機の時には超人的な蹴り技で敵を粉砕する。時折、めぐるへの愛情の残滓を感じさせる。
■紫苑(しおん)
金髪の少女。レイの妹。
15年前、レイの目の前で攫われた。生死不明であり、レイが戦い続ける理由。
■美食家(成金)
表向きは恰幅の良い肥満体の成金。呪骸としての本性を現すと、これまで喰ってきた人間の腕や脚、目鼻が巨体に浮かび上がり、腹部が巨大な口となる。
■犬型呪骸
犬の形をした呪骸。群れを成し襲いかかってくる低級呪骸。本能のままに行動し、知能はない。
■蜘蛛型呪骸
巨大な蜘蛛の姿をした呪骸。腹部には無数の人間の口が浮かび上がり、少女の泣き声を真似て獲物を誘い込む異常変異体。
■肉塊呪骸
美しい少女の皮を被る醜悪な肉の塊。無数の肉腕や骨棘と肉瘤を操る。
■糸繭の呪骸
呪糸が寄り集まって巨大な繭となった呪骸。無数の呪糸の槍を放って三人を串刺しにしようとする。
■人形遣い
黒い燕尾服に白い手袋、丸々と太ったシルエット。裂けた口に三日月のような細い目をした怪人。人間の絶望を極上のエンタメとして愉しむ。
【用語】
■呪骸(じゅがい)
この世に残した未練や絶望、人間の狂気が呪力と結びついて変異した異形の怪物。理性がなく人間を襲うが、人間に従順な個体は裏社会で取引されることもある。
■再演(リテイク)
めぐるが持つ特異能力。残された寿命を代償に時間を巻き戻すことができる。
■3年殺しの呪い
寿命を残り3年にする呪いだが、特異能力を使うことができるようになる。能力を使うたびに命が削られていく。
■忌物(いみもの)
強力な呪力を宿した特殊な素材や道具(ミイラの腕や千年木の樹液など)。強力な呪術を発動するための触媒として高値で売買されている。
■呪影(じゅえい)
呪力によって作られる、現実から隔離された精神・幻覚空間。
■忌造師(きぞうし)
忌物を調合・加工し、特殊な術具や薬品を作り出す裏社会の専門家。
■清掃局(せいそうきょく)
裏社会に蔓延る呪骸を駆除・管理する組織。めぐるとレイはここで飼い犬として呪骸の駆除を仕事としている。