あらすじ

「ワシは、世界一の欲の塊じゃ」 ボロい自転車にまたがり、派手な特攻服で商店街を走る男・ボウソン。 かつて彼は、人の欲を煽り、それを吸い上げる「特攻隊」の隊長だった。 だが今は――「こころ研究所」の見習い研究員。 彼の仕事は、人の心に巣食う「欲」を診ることだ。 こころ研究所では、悩みを抱えた者に帽子をかぶせる。 白。灰。茶。黒。そして、文字。 帽子の色は、その人の心の深さを映し出す。 黒く沈んだ心を見つけたボウソンは、決まってこう言う。 「乗れ」 行き先は、こころ研究所。 刀を差したキリン。 規律に厳しいカンガルー。 物静かな兄貴分のクマ。 常に笑顔の幼い天使と、白衣を着た誰の欲も否定しない18歳ほどの天使。 こころ研究所の者たちは、悩みを解決してくれるわけではない。 答えを教えることもない。 ただ、話を聞く。 そして、本人が自分の「欲」に気づく、その一歩手前まで寄り添う。 それ以上踏み込むことは――規律違反。 彼らには、絶対に破ってはいけない掟がある。 一方、ボウソンを追う男がいる。 かつての同志、親衛隊隊長レオン。 「戻ってこい、ボウソン」 レオンは街に「隊服」を配り始める。 愛。支配。独占。 その欲を武器に、ボウソンをかつての仲間へと引き戻そうとする。 だが、ボウソン自身にも、誰にも言えない秘密がある。 あと3年。 彼は――自分の総長に、吸い込まれる。 人を助けるほど、自分の何かを失っていく。 それでもボウソンは、今日も自転車を漕ぐ。 「欲は悪じゃない。  執着すると、大切なものが見えなくなるだけだ」 さまざまな「欲」を抱えた人々が、今日もこころ研究所を訪れる。 これは、人の欲を静める男が、 かつて人の欲を煽っていた自分自身と向き合っていく物語。 そして―― ボウソンの帽子の奥で、 誰にも知られない何かが、静かに動き始めている。 登場人物 ■ボウソン こころ研究所の見習い研究員。元・特攻隊隊長のイノシシ。 人の欲を煽ってきた過去を持つが、現在は悩みを抱える人を研究所へ連れていく「心の案内人」。 困っている人を放っておけない性格だが、その優しさは時に「規律違反」になる。 愛用の自転車と特攻服がトレードマーク。 そして彼には、誰にも言えない秘密がある。 「ワシは……あと3年しかない。」 ■ムソン こころ研究所の謎の研究員。 白いワンピース姿の幼い天使。 言葉を話せない。 だが、人の心の変化には誰よりも敏感。 背中の羽根は彼女の心と深く関係している。 ボウソンとは、ただならぬ因縁があるようだが――。 ■ソンギリン こころ研究所の研究員。 帽子の色は黄色。文字は「斬」。 「欲を断ち切る」ことを信条とする、刀を持ったキリン。 常に冷静沈着。一人で抱え込む癖がある。 愛用の刀は、迷いや執着を断ち切るためのもの。 「欲を、断ち切る。」 ……そう言いながら、彼自身もまた何かを抱えている。 ■アカンガルー こころ研究所の研究員。 帽子の色は赤色。文字は「律」。 規律を重んじるカンガルー。 真面目で融通が利かないように見えるが、仲間を思う気持ちは強い。 特殊な本を使い、「帰還」を行うことができる。 ■サクマ こころ研究所の見習い研究員。 帽子の色は茶色。文字は無し。 元・甲子園主将のクマ。 父の病をきっかけに夢を諦め、家族を支えるため働き詰めた末に、大切なものを失った過去を持つ。 今は物静かにボウソンを見守る、頼れる兄貴分。 口癖の「よか」は、亡き母から受け継いだ言葉。 「……よか。焦らんでも、よか。」 ■ユイ こころ研究所に現れる。十八歳ほどの、白衣姿の天使。 基本、塩対応気味だがムソンにだけは超がつくほど甘い。 悩みを抱える人の心に寄り添い、そっと背中を押す。 相手の欲を否定しない。 「欲しい」と思うことも、「羨ましい」と思うことも、「誰かに愛されたい」と思うことも。 それは、人間なら誰にでもあるものだから。 ■レオン 親衛隊隊長のライオン。 ボウソンをかつての仲間へ戻そうとする男。 人の欲を利用し、隊服を配ることで人々の願いを叶え、仲間へ引き込んでいく。 ボウソンに対する執着は、ただの友情なのか。それとも――。 「戻ってこい、ボウソン。」 ■総長 こころ研究所とある一族を統べる謎の人物。 「人のため」という理念を掲げながら、研究員、隊員には厳しい規律を課している。 ボウソンとムソンの過去にも関わっている。 「それなら、あなたがやったことにしましょう。」 その言葉をきっかけに、全てが動き出した。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/09/07
  • 現在の作品グッバイソン