あらすじ
世界をなくした小さなこぐまは、ここで新しい「好き」をひとつずつ積み重ねて成長していく。
第5話までのあらすじ
人間と動物が共生している日本。
トーキョーのセタガヤにある『セントラル』
ここは世界中から家族を失った動物たちが保護され、人間と暮らしていくための勉強をする『人と動物の真ん中にある場所』である。
マレーグマの赤ちゃん、まれたんは故郷と家族を失い、セントラルで保護されていた。
日本のインフラ事業の殆どを担う大企業、『駿天クロス』の若社長である宵里(よいさと)は大の動物嫌いだが、セントラルとの仕事のためにヨコハマからトーキョーへやってくる。
世界最大のヒグマであるセントラル会長、レジーナ・カリストに恐怖のあまり失神しかけながらも、その秘書である月守(つきもり)には一目惚れしてしまう。
宵里に興味津々のこぐまたちから逃げ回るうちに、地下の防災シェルターへ飛び込む。そこは何もない部屋で、心と体に深い傷を負ったまれたんだけが、ぽつんと背中を向けて座っていた。
セントラルの広大な敷地内に円環する線路を敷く『くまのて線計画』に着手した宵里は、月守と親しくなりたくて、こぐまたちにちょっかいを出されながらも足しげくセントラルへ通うようになる。一方月守は、たくさんのこぐまたちの世話とまれたんの心を開くのに必死で、宵里には目もくれない。
宵里がひとりでいたある日、まれたんがこそっと宵里に近付いてくる。月守に振り向いてもらうため、彼はぬいぐるみほどの大きさしかないまれたんに、勇気を出して話しかけてみる。すると、「こんにちは。ぼく、まれたん」まれたんが初めて喋ったのだった。宵里はまれたんの胸の模様を、チューリップみたいだねと話す。
全てを失ったまれたんと、全てを持っている宵里との交流が、少しずつ、少しずつ始まった。月守は自分がどれだけ頑張ってもまれたんの心を開けなかったのに、まれたんが宵里に喋り始めたことを複雑に思う。
まれたんは同じころに保護されたツキノワグマの赤ちゃん、つきたんと出会う。非常に臆病で恥ずかしがり屋のつきたんは、ご飯を食べることもできないでいた。
まれたんはつきたんに話しかけ、ふたりで一緒にごはんを食べ、初めてのおともだちになる。そしてセントラルの広大な敷地とこぐまたちが生活する環境を探検する。
つきたんは同じくあまり食欲がなかったまれたんのために、食べやすくなるように食事を工夫してあげるようになる。
つきたんは美味しいと言って食べること、料理をすることに興味を持ち始める。
一方で、セントラルで暮らしているのは、まれたんとつきたんだけではない。それぞれ異なる過去を持つ動物たちが、好きなものを見つけ、人間の世界で生きていくための力を身につけながら暮らしている。
月守は宵里に、まれたんだけを見るのではなく、ここにいるたくさんの子どもたちにも目を向けてほしいと伝える。
宵里はつきたんから「手話」を学び、お喋り以外にも気持ちを伝える方法があることに気づく。
ある日まれたんは魚に見とれて用水路で溺れてしまう。宵里は迷わずまれたんを助け出す。寝込んでしまったまれたんに、宵里は折り紙を与え、この世界には「色」があること、折り紙でチューリップを折ることを教える。まれたんは宵里からもらった折り紙を宝物にする。去り際にまれたんに「バイバイ」と言われた宵里は、「これからは『またね』にしよう」と約束を教える。
今まで、人間と動物が一緒に生きているトーキョーのことを知ろうともしなかった宵里は、まれたんを通じて初めて、自分の目でその世界を見て、知ろうとするようになる。
登場人物
宵里(よいさと)
30代半ば。動物が大の苦手。『駿天クロス』の若社長で欲しいものはすべて手に入れているが、心のどこかに穴があり、それがなんなのかわからない男。まれたんと出会い、親しくなるにつれて、自分からセントラルの世界を知ろうとするようになる。
まれたん
マレーグマの赤ちゃん。男の子。胸に白いチューリップ模様がある。故郷の火災で家族とはぐれ、セントラルで保護された。お喋りが上手。知らないことには興味津々で、新しいことや友達の好きなこと、得意なことを素直に「しゅてきねえ」と言える優しい性格。
月守(つきもり)
20代半ば。セントラル会長レジーナ・カリストの秘書であり、こぐまたちの生活と教育の先生。非常に真面目でまっすぐな性格。中性的な魅力を持つミステリアスな美人。こぐまたちを心から愛していることと、誰よりも真剣にまれたんに向き合ってきたこと、動物が苦手な宵里への複雑な感情に揺れている。正体は人化の術を覚えたメガネグマ。
つきたん
ツキノワグマの赤ちゃん。男の子。まれたんより年上だが、体はまれたんよりも小さい。まれたんと同じころにセントラルで保護された。初めは全くごはんを食べることができなかったが、まれたんに食べて欲しくて、食べやすくする工夫をするようになる。非常に臆病で、まれたん以外に顔を見られることを嫌い、いつもお葉っぱのお面をかぶっている。
レジーナ・カリスト
世界最大最強3.8メートルのヒグマであり、セントラルの会長。世界を股に掛けるスーパーキャリアウーマンならぬクーマン。全てのセントラルの子供たちの母である。
あにー&おってぃ
セントラルで暮らしている年長のこぐまの兄弟。元気と食欲が大爆発しているがちょっとお馬鹿な兄のあにーと、あにーのコントローラー役で冷静沈着で無口な弟のおってぃ。ふたり合わせてあにおってぃと呼ばれている。セントラルの外で元気にアルバイトに励んでいる。
失敗してもいい。できなくてもいい。泣いてもいい。
それでも自分の「好きなこと」は手放さないで。
そして忘れないで。
外の世界に疲れてしまった時は、いつでも帰っていらっしゃい。
―レジーナ・カリスト