あらすじ
「わたし、嘘つけないんです!」
いろんな役を演じてみたい。そう願って演劇部の門を叩いた高校一年生・真昼は、台本のある芝居なら王女だって堂々と演じきれるのに、即興で「バラ、あります」の六文字が言えない。声が震え、目が泳ぎ、語尾が消える。全身で「いま嘘ついてます」と放送してしまう体質だった。
とぼとぼ歩く旧校舎の廊下。ドアの向こうから聞こえてきたのは──
「私が占い師よ!」「嘘です! 私こそが本物の占い師です!」
お稽古の声だと思って開けた扉の先には、とんがり帽子の少女ふたりが、ひとつの水晶玉を取り合っていた。看板は『人狼部(申請中)』。
この世界では、人狼ゲームが競技として成立している。
役職を名乗る(CO)ときは、対応する衣装を着るのが決まり。占い師ならとんがり帽子と水晶玉、人狼なら狼の耳と尻尾。「衣装は『宣言』であって、『真実』ではありません」。
嘘がつけない村人は、誰よりも信用される「白」になれる。
──でも、その子が人狼のカードを引いてしまったら?
騙して、騙されて、お菓子を食べて(競技規定で推奨)。
嘘と本当を道具みたいに持ち替える少女たちの、ガールズ競技人狼ストーリー。
■キャラクター
真昼(まひる)
主人公・1年生。トロくてチョロくて、嘘がつけない。書かれた台詞なら何でも言えるのに、自分でつく嘘は一つも言えない。信じることしかできない耳が、卓の上で思わぬ武器になる──かもしれない。
東雲 雫(しののめ・しずく)
部長・2年生。黒髪ロング、クール。試合中は一切お菓子に手をつけない。全国レベルの実力者らしいが、部の後輩たちも彼女の本当の勝ち方を知っているとは限らない。
夕凪 燐(ゆうなぎ・りん)
2年生。小柄で騒がしいロマン特化のギャンブラー。狼全騙り、身内切り、そういう「伝説になる手」が大好き。10戦して3回伝説を作り、4回自爆する。
宵野 栞(よいの・しおり)
1年生。眼鏡、三つ編み。ルールと規定の番人で、説明モードに入ると背筋が伸びて別人のように凛々しくなる。振り回され型の常識人だが、勝つためなら自分の正論すら折る。
そして、5脚目の椅子
部員は4人。でも部室の椅子は5脚。誰も座らないその席には、開封済みのまま輪ゴムで留められた駄菓子が残っている。
■舞台
現実とほぼ同じ、平和な学園。ただしこの世界では人狼ゲームが「競技」として認知され、高校には人狼部があり、全国大会がある。窓の外には全国常連の強豪校も見える。
競技人狼には独特の作法がある。役職をCOするときは必ずその役の衣装を着ること(衣装を着る=役を名乗る、脱ぐ=役を捨てる)。試合中の糖分補給は脳をフル回転させるため公式に推奨されていること。
旧校舎の片隅、衣装ラックと円卓とお菓子の山がある『人狼部(申請中)』の部室から、物語は始まる。