あらすじ
十年間、第一王子アルベルトの婚約者として、王妃になるための教育と責務に身を捧げてきた公爵令嬢セレスティア・ヴァルフォード。
ところが王立学院の卒業祝賀会で、アルベルトは男爵令嬢リリア・モートンを守るように抱き寄せ、セレスティアとの婚約破棄を宣言する。
教科書を隠した。階段から突き落とした。紅茶に毒を盛った。
身に覚えのない罪を並べられても、セレスティアは取り乱さなかった。彼女は証拠を一つずつ求め、リリアの証言に潜む矛盾を指摘していく。
やがて、階段から突き落とされたとされる時刻、セレスティアは国王らと外交会議に出席していたことが判明する。さらに毒殺未遂の証拠も、王子の側近が宮廷薬師を脅して作らせた偽物だった。
断罪の場へ現れた宰相オズワルドは、王子府の不正会計を示す帳簿を公開する。アルベルトがリリアへ贈った宝石や別荘の購入費は、北部の堤防を補修するための資金から流用されていた。
それでもアルベルトは、真実の愛を理由にリリアとの結婚を望む。
セレスティアは婚約破棄を受け入れるが、その代わりに婚約条約に基づき、公爵家が王家へ提供した金貨二百四十万枚相当の資産返還を要求する。
国王は婚約破棄を認めると同時に、アルベルトの王位継承権を停止する。王子でなくなったアルベルトを前に、リリアの愛はたちまち揺らぎ始める。
一方、王妃候補という役目から解放されたセレスティアには、北方の大国エルグレン帝国から招待状が届く。それは彼女を誰かの婚約者ではなく、一人の優れた政策立案者として評価するものだった。
セレスティアは帝国で銀髪の皇太子ユリウスと再会し、新鉱脈を巡る外交交渉に挑む。しかし、すべてを失ったリリアとアルベルトは、自分たちの没落をセレスティアのせいだと決めつけ、最後の逆転を狙って彼女の暗殺を企てる。
悪役令嬢と呼ばれたセレスティアは、自らの知略によって陰謀を打ち破り、奪われた名誉を取り戻していく。
これは王子に捨てられた令嬢が、新しい王子に愛されるだけの物語ではない。
誰かの妃になるために閉ざされていた女性が、自分自身の名前で未来を選び、人々を救い、真実の幸福を手に入れる物語である。