あらすじ
森を彷徨い、獣のように生きていた五人の若者――ロビ、トロス、イセ、ブリオ、チドリ。
彼らには獣の耳と尾があり、自分たちが何者なのかも、どこから来たのかも知らなかった。
言葉さえ満足に持たず、腹が減れば食べ物を探し、寒くなれば南へ移る。ただ今日を生き延びるだけの日々。
そんな彼らはある日、山々に囲まれた谷の奥で、不思議な白銀の樹と出会う。
――アニマ。
頭の中へ響いたその名とともに、五人の中で眠っていた「言葉」と「知恵」が目を覚ました。
火を起こす。
家を建てる。
器を作る。
食べ物を育てる。
誰かを愛し、家族をつくる。
昨日まで存在しなかったものを、一つずつ自分たちの手で生み出しながら、五人の小さな暮らしは、やがて村となり、社会となり、長い歴史へと姿を変えていく。
しかし彼らはまだ知らない。
なぜ自分たちだけが、アニマの声を聞くことができるのか。
なぜ失われたはずの知識が、自分たちの中に眠っていたのか。
そして、この星のはるか上空から、彼らの歩みを見つめ続ける「何か」が存在することを。
これは、五人の獣から始まった文明の物語。
石器の時代から、王国と戦争の時代へ。
鉄と機械の時代を越え、いつか星の海へ至るまで。
人はなぜ文明を築くのか。
積み重ねた歴史に、意味はあるのか。
――その答えを求めて、獣たちは歩き始める。