あらすじ
後宮に「耳聡い妃」がいると噂されている。 その妃は、人の嘘が不協和音に聞こえるという。横紙破りの宦官は断罪され、偽りの寵姫は失脚した。後宮の者たちは彼女を「鈴音妃(れいおんひ)」と呼び、震え上がる。
——実際の鈴蘭(すずらん)は、ただの腹ペコである。
下町の屋台で育ち、絶対音感ならぬ「絶対嘘感」を持つだけの女。嘘を聞くと腹が減る体質のせいで、夜な夜な厨房を漁っていたら、なぜか「後宮の悪を正す義賊」と勘違いされ、あげく皇帝陛下ご本人に「朕の耳となれ」と直々のお達しを受けてしまった。
「え、わたし、ただご飯が食べたいだけなんですけど」 「うむ。食事は心配するな。国庫が保証する」 「…………行きます」(即断)
こうして鈴蘭は、嘘と陰謀と山積みの饅頭に囲まれて、後宮の深淵を聞き歩くことになる。 だがある夜、彼女の耳に届いたのは——皇帝自身の、澄み切った嘘の音だった。