あらすじ
本書は『昨日のルーター』の前日譚です。まずそちらの作品をお読みいただくことを強くお勧めします。
『昨日のルーター』の出来事から5年前。十三番街出身で、独学で道を切り開いたプログラマーのヴェシメ・コスティナは、レンズ・コーポレーションに次ぐ巨大企業グループの傘下である「ローストリン不動産」で、主任ソフトウェアエンジニアの一人となっていた。
しかし、週末や深夜までオフィスで過ごすような生活は彼が望んだものではなく、かつて十三番街から彼を救い出したはずの仕事そのものが、彼の人生におけるあらゆる楽しみを侵食していくのだった。
ある日の夕方、仕事を終えて地下鉄の電車を乗り間違えたシステムエンジニアの彼は、四番街にある麺類屋で一人の花屋の少女と出会う。そしてそこから、言葉では伝えきれない思いを手紙に託しながら、彼は未完成だった己の人生の台本の余白を、少しずつ埋めていくのだった。