あらすじ
職業相談所のカウンセラー、エリオットは、ある日受付でとても高級そうな紙を受け取る。
それは、国王の署名入り「勇者廃業届」だった。
「仕事を探したい」そう言って訪れたのは、十四年の旅の末、ついに魔王討伐を成し遂げた勇者レオン。
ところがレオンが希望したのは、勇者としての経験を活かす仕事ではなかった。
「剣以外で、誰かの役に立つ仕事がしたい」
剣と魔法しか知らない勇者に、どんな仕事を紹介すればいいのか。
職業相談所では、まず職務経歴書の書き方から教えることに。
さらに、やりたいことが分からない勇者に農業、漁業、冒険者ギルドの受付、商会など、さまざまな仕事を短期で体験してもらう。
勇者は、果樹園で初めて働く楽しさを知る。
冒険者ギルドでは、自分にも人と関わる仕事ができると気づく。
一方で、勇者という肩書を利用されることに戸惑い、戦闘のある仕事では、安心して働ける環境について考えるようになる。
これは、戦うことしか知らなかった英雄が、さまざまな仕事と人々との出会いを通して、「働くこと」と「自分らしく生きること」を少しずつ見つけていく、その手伝いをするカウンセラーのお仕事ファンタジー。
【登場人物】
◆ カウンセラー エリオット・グレイ(27)
職業相談所の若い相談員。
真面目で、規則をきっちり守るタイプ。
しかし相談者一人ひとりと誠実に向き合うため、講師の老人からも厚い信頼を寄せられている。
勇者を英雄ではなく、一人の相談者として接する。
◆ 勇者 レオン・ヴァルハルト(32)
魔王を討伐し、役目を終えた英雄。
剣も魔法も一流だが、仕事探しはまったくの初心者。
責任感が強く、困っている人を放っておけない性格のため、どの仕事でもつい助けすぎてしまう。
「勇者だから」ではなく、「一人の人間として何をしたいのか」を探している。
10歳
勇者として見いだされる。
王宮に迎えられ、訓練・教育を受ける。
18歳
魔王討伐の旅に出る。
仲間5人を率いて各地を巡る。
18歳~32歳(14年間)
勇者として魔王討伐任務に従事。
魔物討伐、護衛、地域支援、仲間の統率などを経験。
32歳
魔王討伐を達成。
勇者としての任務完了。
◆ カウンセラーの上司 マーク・ベルナール(55)
相談所の責任者。
勇者が来てから毎日胃が痛い。
「離職理由は?」「当面の生活費は?」と部下が普通に聞いてしまうたびに胃が痛くなる苦労人。
◆ 講師の老人 オルド・フェルナー(67)
職務経歴書講座の講師。
元ベテランカウンセラー。
「それは勇者の特技じゃ。そうではなく、あんた自身の特技を書け」と勇者の経験を言語化していく。
本人は「腰が痛い」としか言わないが、人を見る目は確か。
◆ 果樹園のおじさん トーマス・リード(48)
勇者が最初に働く果樹園の主人。
勇者を特別扱いせず、一人の働き手として接する。
「あんたならもっといいところがあるだろう」と言いながらも、最後には「まあ、うちはありがたいがな」と迎え入れる。
◆ 国王(58)
36歳のときに、10歳の勇者を王宮に向かえる。
魔王討伐を命じて勇者を送り出してから14年間、勇者の戦いの報告を聞き、帰還を待った。
気づいたら家族同然の存在になっていた。
勇者に出ていかれて、内心ショックを受けている。
【世界観】
世界観は西洋ファンタジー。
王宮、冒険者ギルド、騎士団、農場、鉱山、港町などが存在し、人々はそれぞれの仕事をしながら暮らしている。
魔王が討伐され、世界には平和が訪れている。
職業相談所では失業手当や職業訓練、職務経歴書講座などの制度が整っている。
物語のテーマは「英雄のその後」。
世界を救った人も、明日からは働いて生活していかなければならない。