あらすじ
結婚式まで、あと七日。
婚約者の藤森彩香の初恋相手、早川亮介が出所した。
彩香とは五年間付き合い、この日のために二人で準備を重ねてきた。
亮介が戻ってきたと知った時、もしまだ気持ちが残っているなら、今のうちに別れてもいいと俺の方から切り出したくらいだ。
結婚してから三人とも不幸になるより、その方がずっとましだと思っていた。
けれど、彩香の父親はわざわざ俺のところまで来て、
「あの子はもう過去を引きずっていない」
と言った。
たった一人の妹、久我莉子も泣きながら腕にしがみついてきた。
「彩香さん、お兄ちゃんが一番苦しかった時もずっとそばにいてくれたじゃん」
親友の三浦拓也まで胸を張った。
「五年一緒にいたんだぞ。今さら昔の男が出てきたくらいで、何が変わるんだよ」
その言葉を信じた。
結婚式当日までは。
ホテルへ向かう途中、拓也が煙草を吸うために車を降りた。
直前まで触っていたサブ端末を助手席に置きっぱなしにしている。
画面もロックされていなかった。
そこへLINEの通知が入った。
グループ名は、
【彩香&亮介 復縁作戦】
次々と写真や動画が投稿されていた。
月ノ森迎賓館。
ウェディングドレス姿の彩香。
その向かいには、五年前に服役した亮介がいる。
二人は指輪を交換し、抱き合い、最後には唇を重ねた。
その周りで拍手しているのは、莉子、拓也、彩香の父親。
そして本来なら今日、俺の結婚式に来るはずだった友人たちだった。
少しして、彩香からメッセージが届いた。
【今日くらいは、亮介との約束を守りたいの】
続けて、もう一件。
【でも明日は予定通り颯人と凪原市役所に行く。株の契約もあるから、それまでは絶対にバレないようにして】
最後まで読んでも、誰にも問いたださなかった。
ただ画面を消し、端末を元の場所へ戻した。
あれだけ楽しそうに芝居をしているのだ。
最後まで付き合ってやろうと思った。