あらすじ
46歳。B級止まりの探索者だった俺は、これといった功績も残せないまま探索者を引退し、都会から離れた田舎で和食料理屋を始めた。毎朝だしを取り、魚をさばき、季節の料理を作る。派手さはないが、危険なダンジョンに潜ることも、誰かに認めてもらう必要もない。俺はようやく、自分の身の丈に合った静かな暮らしを手に入れたと思っていた。
ところがある日、昔の弟子が店を訪ねてくる。
若い頃に俺が面倒を見ていた弟子だったが、今では世界に名を轟かせる超一流の探索者になっていた。
「師匠、お久しぶりです。俺はまだ、師匠に何も返せていません」
いやいや。
お前はもう十分すぎるほど成功しただろ。
そう思う俺をよそに、その後も昔の弟子たちが次々と店を訪れるようになる。
世界を救った英雄。
5大ギルドの社長。
国を代表する探索者。
誰もが知っている有名人。
かつて俺が教えた弟子たちは、いつの間にか俺なんかでは到底届かない場所まで出世していた。
それなのに、彼らは口をそろえて言う。
「師匠への恩返しが、まだできていない」
俺には何もない。
46歳までB級止まり。
探索者として大成できなかった、ただの引退したおっさんだ。
だからこそ分からない。
なぜ、こいつらは今さら俺なんかを訪ねてくるんだ?
これは、何者にもなれなかった男が、田舎の小さな和食料理屋で静かに暮らしながら、昔の弟子たちから自分でも知らなかった「師匠」としての人生を教えられていく物語。