あらすじ
三年同棲した部屋を、今日で完全に出ていく。引っ越し作業を終えた初秋の夜、私は近所の古びたコインランドリーにいた。手元には、彼が置いていった数着のシャツと、今日まで私が使っていた銀色の合鍵。スマホには「残った服は着払いで送って。鍵はポストに入れといて」という彼からのLINEが光っている。関係をきれいに終わらせるべきだと頭では分かっているのに、鍵を持ち帰ればもう一度会う口実ができるという未練が心を濁らせる。深夜のランドリーに響く乾燥機の回転音と、古い蛍光灯。その無機質な空間で、ふいに蛍光灯が白く濃く瞬き、乾燥機の窓の中で回る衣類が現実の時間から一拍だけ遅れて落ちていくような奇妙な錯覚に囚われる。温かい布の感触と洗剤の匂いの中で、私は一つの静かな決断を下す。