あらすじ
初夜に告げられた離縁の宣告は、彼女にとってこの上ない慈悲だった。
誰からも愛されず、役立たずとして売られたエレナには、秘密がある。
心臓が少しずつ石に変わる病により、彼女の命は残り半年しかなかった。
冷酷な夫が提示した離縁の期限は、奇しくも己の余命と完全に重なっていた。
誰の足手まといにもならず、静かに消え去ることができる。
そう安堵した彼女は、残された命を使い、完璧な事務の引き継ぎを始める。
次の妻が困らぬようにと、彼女は痛みに耐え、ただ淡々と身辺整理を進める。
しかし、冷徹に突き放してくる夫の瞳には、説明のつかない焦燥が宿っていた。
命の灯火が消えかける中、すれ違う二人の想いは、決して交わることがない。
すべてを整え終えた朝、彼女が倒れた時、絶対零度の男が選んだ道とは何だったのか。
氷の城で交わされた冷たい契約の裏に、どれほどの祈りが隠されていたのだろうか。