あらすじ
乾いた夜道にぽつんと灯る、高速道路のサービスエリアが好きだった。旅人になりたかったわけではない。誰かが立ち寄り、一息つける場所でありたかった。
終わりのない理不尽な苦情を浴び続け、心が完全に擦り切れて「なんでもいいです」としか答えられなくなった元コールセンター統括のケイ。虚無に呑まれて異世界へ肉体ごと転移した彼は、王都外縁の平民墓地で行き倒れ、無気力な元騎士の墓守に拾われる。
インクが切れないボールペンと尽きない手帳を手に、小屋の軒先へ掲げたのは不揃いな看板『相談所』。
訪れるのは、政略結婚に怯える伯爵令嬢、焦るパン職人、臆病者と蔑まれる大盾使い。忠義に厚い海洋の亜人護衛。
傷つき、行き場を失った者たちが集う墓場小屋の土間には、いつも素朴な煮込みの湯気と、手帳に描き足される愛らしい鈴の絵があった。
静かな傾聴で誰かの足元を照らす、異世界生活譚。
※平日更新の予定です。