あらすじ
「せいぜい、化け物の腹の足しにでもなりなさい」 継母と異母妹に嗤われ、伯爵令嬢アイリスは、"人喰いの辺境伯"と畏れられる男のもとへ、厄介払いのように売られていった。
歴代の妻を喰い殺したと噂される、血染めの辺境伯ジーク・ヴァレンシュタイン。国境の魔物を屠り続ける、この国最強にして最恐の武人。誰もが「あの家に嫁ぐのは死を意味する」と信じていた。
アイリスもまた、死を覚悟して、その地へ足を踏み入れた。
――けれど。蓋を開けてみれば。
「……君が、泣くのは嫌だ。何が欲しい。何が望みだ。すべて、私が叶えよう」
恐ろしいはずの旦那さまは、地味で誰にも省みられなかった私を、この世の何より大切そうに、蕩けるほど甘やかしてくるのです。
そして――人喰いという噂が、敵国の流した真っ赤な嘘であったこと。この人が本当は、王国の要たる英雄であったことを、世界が知る日が、やってくる。
今さら実家が「娘を返せ」と縋ってきても、もう遅いのですわ。だってわたくしは、もう、この人の腕の中でしか、生きられないのですから。