あらすじ
前世で気象予報士だった伯爵令嬢フィオナは、ある日突然「雨を呼ぶ聖女」に選ばれた。
けれど、どれだけ祈っても雨なんて降らない。
やがて本物の聖女が現れたことで、フィオナは偽聖女の烙印を押され、王太子との婚約まで破棄されてしまう。
追いやられた先は、長い干ばつに苦しむ辺境の港町。
当然、そこでも人々は彼女に雨を降らせてほしいと願った。
「ごめんなさい。私には雨を降らせることはできません」
奇跡なんて使えない。
けれど空を見上げたフィオナは、前世では何度となく見てきた雲に気づく。
「でも――明日の午後なら、雨が降ります」
誰も信じなかったその予報は、翌日、本当になった。
雲を見る。
風を読む。
記録を取る。
雨を降らせることはできなくても、雨が来る前に知らせることならできる。
農家は種を蒔く日を決められる。
漁師は嵐の前に港へ帰れる。
商人は荷物を雨から守れる。
やがて「偽聖女」と呼ばれた少女の予報を、人々は奇跡よりも待つようになっていく。
そして彼女を最初に信じた辺境伯アルノーだけは、最初から言っていた。
「雨を降らせなくてもいい。君は、雨が降る前に人を救える」
これは奇跡を起こせなかった偽聖女が、人々に“明日を準備する時間”を与える物語。
そして、未来なんて分からないと思っていた彼女自身が、ひとりの青年との未来を選ぶまでのお話。