あらすじ
《あらすじ》
永遠に続く数字の羅列を美しいと言う人がいる。割り切れないものを挙げるなら、彼はきっと循環小数と答え、俺は恋と答える。
理系の名門・桃野谷大学。設立されたばかりの学内唯一の文系学部に入学した河野真琴は、文系学部をよく思っていない理系学部からの冷たい視線に辟易しながら大学生活を送っていた。楽観的でポジティブ、くよくよ考え込むことのない真琴は大学での四年間を、サークル活動や恋や酒などで満ち足りたものにしたいと思っていた。しかし、「桃野谷の文理は犬猿の仲」と学外からも揶揄されるほどに相容れない両学部の交流の場として設けられた学部共通の授業で、理学部の四年生・平井藤臣が講師としてやって来たことから、真琴の毎日は自分でも思っていなかった方向へと変わっていく。
まるで魔法のように数式を解いていく藤臣に興味が湧く真琴。藤臣は成績優秀で誰にでも優しく、人を惹きつける魅力を持っているが、答えの見つからない“恋”という感情には疎かった。成り行き任せで興味のある物事に対して真っ直ぐな真琴は、藤臣を「先生」と呼び勝手に慕うようになる。今まで想いを寄せていた女子へのアプローチもおざなりになり、藤臣への興味が赴くままに、先輩後輩としても友情を深めていく真琴。藤臣は文系学部の後輩に懐かれているということで、古くからの友人や同じ学部の仲間からも心配されるようになるが、真琴と過ごす日々に楽しさを覚えていた。
今まではかわいい女の子にしか興味がなく、面倒ごとを殊更嫌う真琴だったが、思慮深い藤臣と接していくうちに自分の中に人としての興味を超えた独占欲が芽生えていることに気が付いた。自問自答を繰り返して思い悩むのが苦手ということで、真琴は早々に自分の想いを藤臣に伝えてしまう。恋を知らない藤臣は真琴からの告白を断るものの、これからも友人として仲良くしてほしいと頼んだ。
「待て」をされている真琴と、「よし」を言うタイミングがわからない藤臣。真琴は大人しくおすわりをしながらも、心の距離を縮めていく。
「好きになってもらえないのは、嫌われるよりずっといいから大丈夫って思ってたんですよ。……やっぱり、待ってるのも苦しかったです。」
苦しかった。あのときはいくらでも待てると思っていた。きっとこの先もずっと待つことは出来る。俺は、自分が先生からの言葉を待てなくなって諦めて離れていくとは思えないのだ。それでも、
「でも、それも今日で終わりにしてきます。」
楽観主義ワンコ系年下と天然人たらし理系お兄さんの割り切れない恋の話。