あらすじ

約束の日に、婚約者は来ませんでした。十年で、これが何度目かは数えておりません。 贈り物は、いつのまにか妹のものになっておりました。「エルザのほうが似合うもの」と、母が申しますので。 父は笑って、こう言いました。男とは、そういうものだ。 そして母が、十年、同じ言葉を言い続けました。 「お前が我慢すればいい」 わたくしは我慢が上手でございます。十年、一度も泣きませんでした。それだけが取り柄でございました。 でも、その夜だけは、なぜか手が勝手に動きました。 生まれて初めて、辺境のおばあ様へ、手紙を書いたのです。 ――三日後の朝。玄関の扉が、ドガンと激しく外から蹴り開けられました。 七十六歳。辺境を三十年守り抜いた、元・伯爵夫人。 おばあ様は、帳簿もお持ちになりません。証拠も、お集めになりません。 ただ、その場にいる方へ順に、一言ずつおっしゃるだけです。 すると婚約者も、そのご両親も、わたくしの実家までもが、勝手に崩れてまいります。 ただし――おばあ様は、代わりには言ってくださいません。 「あたしは三つしか決めてない。呼ばれなきゃ行かない。代わりには言わない。一度に一つだけ」 最後の一言は、いつも、わたくしの番で止まります。 十年ぶん我慢した娘が、「言っていい」を覚えるまでの話です。 おばあ様の後ろには、辺境から来た無愛想な若者がひとり立っております。彼は、思ったことを、そのまま言います。 「ふんっ! で、どいつだい?」

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小説を読もう2026/08/19
  • 現在の作品「お前が我慢すればいい」と十年言われ続けたので、おばあ様に言いつけました ~辺境を三十年守った元・伯爵夫人が、婚約者の家ごと片付けにいらっしゃいます~