あらすじ
ダンジョン最深部。
世界中の冒険者が命懸けで目指す、魔王の玉座――。
その隣に、一軒の小さな床屋がある。
店主のレオンは、戦えない。
魔法も使えない。
ただし――髪を切る腕だけは、世界一だった。
「魔王討伐の前に、髪を整えてくれ」
「断る。余の予約が先だ」
「二人とも、店内では戦わないでくださいね」
ダンジョンには、モンスターも勇者も魔王も関係なく争えない「安全地帯」がある。
そして、その最深部にある床屋には、今日も様々なお客さんがやってくる。
ボロボロになった新人冒険者。
髪が伸びすぎた魔王。
散髪だけは欠かさない勇者。
人間の髪型に興味津々のドラゴン。
掃除が得意なスライム。
命懸けの冒険の途中で、ほんの少し休める場所。
勇者も魔王も、ここではただのお客さん。
今日もダンジョン最深部で、剣ではなくハサミの音が響いている。