あらすじ
朝、工場のチャイムが鳴る。
決められた時間に起き、決められた道を通り、決められた場所で働く。
新卒で工場に就職した青年・拓斗は、夜勤と長時間労働を繰り返す毎日の中で、少しずつ自分が何のために生きているのか分からなくなっていく。
けれど、家に帰ればギターがある。
仕事から帰って眠るまでのわずかな時間を使い、曲を作り、ギターを弾き、歌詞を書く。
誰かに頼まれたわけでもない。
それで金が稼げるわけでもない。
再生数も、評価も、ほとんどない。
それでも音楽だけは、工場で過ごす時間とは違って、自分自身でいられる気がした。
「いつか音楽で生きていきたい」
そう思いながらも、現実には毎月の給料が必要で、生活もある。
夢を追うにはあまりにも普通の人間で、夢を諦めるには音楽が好きすぎた。
やがて身体と心は限界に近づいていく。
工場で働く自分と、音楽を作る自分。
どちらが本当の自分なのか。
工場勤務を通して、青年は「働くこと」「生きること」「好きなことを続けること」の意味を考えるようになる。
これは、夢を叶えた成功者の物語ではない。
夢を叶えられるかどうかも分からないまま、それでも今日もギターを手に取る、一人の人間の物語である。