あらすじ
怪奇現象を百件以上調査し、そのすべてを科学的に解明してきた異常知覚研究者・久世冬馬。
幽霊、呪い、ポルターガイスト。
世間では「怪異を否定する男」として知られる彼だが、本人は決して幽霊の存在を完全に否定しているわけではない。
「これまで、超自然現象だと断定できる事例がなかった。それだけです」
映像制作会社のディレクター・神崎美琴は、そんな久世とともに、山奥に残された廃研究施設――旧・白鐘知覚研究所を訪れる。
二十四年前に閉鎖されたその施設には、ある噂があった。
誰もいない廊下を歩く足音。
監視カメラに映る白い女。
地下から聞こえる子供の声。
そして、存在しないはずの「零号室」。
次々と起こる怪奇現象を、久世は冷静に解き明かしていく。
足音には原因がある。
白い影にも理由がある。
声にも、科学的な説明がつく。
美琴たちは次第に思い始める。
この研究所にも、幽霊などいないのだと。
しかし深夜。
使用できないはずの零号室で、古い電話が鳴る。
時刻は、午前二時十七分。
受話器の向こうから聞こえてきたのは、女の声だった。
そしてその声は、そこにいる一人の名前を呼ぶ。
これまで、どんな怪異にも答えを出してきた久世冬馬。
その彼が初めて口にする。
「……まだ、原因は分かりません」
二十四年前、この研究所で何が起きたのか。
なぜ怪異は、特定の人間だけを追うのか。
そして、科学で説明できないものは、本当に存在するのか。
これは、怪異を信じない人間たちが、次第に“信じざるを得なくなっていく”物語。