あらすじ
私_茨 澪と、私の彼氏_朔は生活時間がまるで違う。私にとっては夜ご飯、朔にとっては朝ご飯を一緒に食べてそれぞれの生活を送る。
白金色の髪、赤い目、鋭い牙、夜を好む性質。周りには秘密にしているが、朔の正体は吸血鬼だ。しかし秘密を守るのが大変かといえばそうでもない。目を惹く髪や目の色は現代の街に溶け込み、吸血鬼の弱点と言われるものもそれほど重要じゃない。私の恋人の吸血鬼は現代に適応して驚くほど逞しく生きている。私は朔が好きで、朔も私が好きで、生活時間が合わなくても上手くやれていると思っていた。
しかし、会社の友達との女子会で私と朔の状況を客観的に振り返った時、『ご飯と"そういうこと"を提供する都合良い女』という言葉が頭に浮かんでしまった。一度疑ってしまったらそればかり考えてしまう。疑念を晴らしたくて朔へ私のことが好きか問うと、彼は赤い目を細めて「澪はさ、俺の気持ちの半分もわかってないよ。…好きな気持ちを問いたいのは俺のほうだよ。」と切なく苦しい顔をした。
朔との出会いは高校二年生の秋で、その正体を知ったのは高校三年生の夏だった。窓を叩きつける激しい雨、湿った教室の匂い、響く遠雷、切れた指の痛みと滴る血の赤、血よりも赤い目。あの時のことは私の五感が覚えている。あの日に囚われたのは私か、それとも朔か__。
朔の胸に秘められた重い愛と、私の揺るがない覚悟が交わった時、私達は誓いを立てた。