あらすじ
三十一歳の美沙は、昔から何をしても少しだけ「ちゃんとできない」。
忘れ物をしたり、興味を持ったものに夢中になりすぎたり、思いついたことへすぐ飛びついたり。そのたびに家族や職場の人を少しだけ困らせ、三年間同棲している健吾からも「悪い癖だよ」と何度も言われてきた。
自分でも、直したほうがいいと思っていた。
けれどある夜、ただ夢中で安土城のプラモデルを作っていただけなのに、いつものように「悪い癖」を指摘された美沙は、初めて納得できなくなる。
喧嘩の末、ふらりと家を飛び出した美沙に声をかけてきたのは、妙な服を着た、どう見ても遊び慣れていそうな男だった。
そのままホテルまでついて行き、一夜限りの浮気で終わる――はずだった。
ところが男は、美沙の身体よりも、美沙自身に妙なくらい興味を示してくる。
話が飛べば面白がり、突然何かに夢中になれば一緒になって覗き込み、美沙が「私の悪いところ」と話すたび、なぜそれが悪いのかと不思議そうに首を傾げる。
ずっと直さなければいけないと思っていた自分を、初めて「面白い」と思ってくれる人。
そんな男と何度も会ううち、美沙は少しずつ分からなくなっていく。
ちゃんとした私にならなければ、愛されないと思っていた。
でも――本当にそうなのだろうか。
これは、誰かに好かれるために自分を直そうとしてきた女が、自分のままで愛されることを知るまでの恋の話。