あらすじ
「貴様は領地ごと追放だ」
満座の夜会で、王太子ジェラルドから婚約破棄を告げられた悪役令嬢セレスティア。
聖女マリエルは笑う。「果実なんて誰でも採れるわ。あの女がいなくても、月夜に採ればいいだけですもの」
――採ることと、実らせること。その違いを、あなた方はご存じないのですわね。
前世は日本の農業研究員だったセレスティアには、誰も知らない秘密があった。
満月の夜にだけ銀色の果実を実らせる神木・銀月樹(ムーンハーヴェスト)。その果実こそ、飢饉に苦しむ北方の小国レイフェルトを支える唯一の保存食。そして、その木を実らせられるのは――この世界でセレスティア、ただ一人だけ。
育て手を失った木は、やがて一粒も実らなくなる。国が失われた価値に気づくまで、あとひと月。
忠実な侍女リゼルと共に、セレスティアが向かったのは竜人が守護する死の荒れ地・ウルズ渓谷。誰もが「終わりだ」と囁いた地は、彼女の目には新しい畑にしか見えなかった。
荒れ地の主である不器用な竜人将軍ガルドとの出会い。愛情を注いだ土地でしか実らない銀月樹は、やがて渓谷を銀色の果樹園へと変えていく。
必要とされず切り捨てられた令嬢が、真の居場所と価値を証明する、痛快スローライフ・ざまぁ物語。
王都からの使者が三度訪れても、彼女の答えは決まっている。
「――お断りいたしますわ」