あらすじ
工房の扉から吹き込んだ風が、暖炉の火を細く倒す。灰色の外套の袖口を押さえると、擦り切れた布から綿が一本、こんにちは、と顔を出した。三年間も付き合った仲だ。私より先に挨拶ができて偉い。
伯父様は私を役立たずと捨てておいて、今度は私の布で領民を包めとおっしゃる。お願いの縫い目が、ずいぶん粗い。
長い食卓には焼きたての丸パン、豆と腸詰めの煮込み、林檎の蜂蜜煮。私が立ったあとには椅子が一つ、きちんと引かれたまま残っている。
三年前の私には、どれも高級宝飾品より珍しかった。食べられる椅子ではないけれど。そこは惜しい。