あらすじ

小さな町に、死んだ人の最期の一言を運ぶ稼業がある。 榊透、二十七歳。表の看板は何でも屋「榊便利堂」。草むしり、網戸の張り替え、猫捜し、仏壇の移動。頼まれれば断らない。断らないから頼まれる。 その最後に、これがくっついてくる。 臨終の場に居合わせ、その人が言い残そうとした一言を、声色ごと預かる。預かれるのは一度に一言だけ。期限は七日。宛先の前で口を開けば勝手に出るが、それ以外の誰に言ってもただの音にしかならない。 届けられなければ、言葉は腐る。腐った言葉は預かり屋の中に居座り、代わりに本人の言葉がひとつ消える。 老人が最期に呼んだのは、とうにいなくなった飼い犬の名前だった。九十歳の女性は「あの子に」とだけ言い残し、宛先の名を告げずに死んだ。夜の県道で出くわした見知らぬ男は、頼んでもいないのに一言を残していった。 一件ずつ、七日ずつ。透は他人の言葉を運び続ける。

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カクヨム
カクヨム2026/08/18
  • 現在の作品預かり屋 榊便利堂 ~死者の想いのこもった最期の一言を七日以内に届けます。失敗すると、代わりに自分の中から言葉がひとつ消える~