あらすじ
わたくしの力には、目盛りがございます。
零から、十まで。
一で、王国最強の騎士団長と互角。
二で、竜の巣がひとつ消えます。
三で、軍がひとつ消えます。
五で、城が消えます。
十は、六十年前に一度だけ使われました。その痕が、いまの国境線でございます。
ですから、わたくしは毎朝、地図を広げて数を数えます。
二の届く先は半里。その半里の内側に、村はあるか。牛はいるか。薪を拾う子はいるか。
――います。では、二は出せません。
わたくしはヴィオレーヌ・ド・ヴェルニュ。十八。〈段〉の当代でございます。
段は、声に出して数を宣言しないと上がりません。ですから敵にも読まれます。
上げた段の数だけ、半日ずつ冷めるのを待ちます。仕事を終えてその場を離れたときから、冷めるまで、この手が触れたものは砕けます。
二を出した日は、まる一日、わたくしは誰にも触れません。匙も持てません。扉は肘で開けます。
それでも朝が来れば、地図の前に立ちます。
「今日は――〈二〉で参ります」
わたくしにできるのは、加減だけでございます。