あらすじ
身分違いの恋人・カイルと別れ、子爵令嬢リディアが嫁いだ相手は、王国でも名高いヴァルター侯爵エドガーだった。
家への援助と引き換えの政略結婚。
しかも初夜に告げられたのは、
「お前を愛することはない。愛を求めるな」
という冷たい言葉だった。
夫は王都、妻は領地。
ほとんど顔を合わせることもないまま、リディアは侯爵夫人として領地を切り盛りし、夫の養子である四歳のアルノーの母代わりとなる。
可愛らしいアルノーとの生活は幸せだった。
時折帰ってくる夫から嫌味を言われることを除けば。
そんなある日、別れた恋人カイルから、貴族家の従者として働くことになったという手紙が届く。
そして結婚から二年。
このまま白い結婚を続ければ、三年後には離婚できる。
そうすれば、いつかカイルと――。
そんな未来を思い描き始めた矢先、エドガーが倒れたとの知らせが届く。
王都へ駆けつけたリディアを待っていたのは、死を目前にした夫の姿だった。
エドガーには、余命がほとんど残されていなかった。
しかも彼は、自分が死んだ後の侯爵家と幼いアルノーの未来を、すでに準備していた。
そして、そのために育ててきた人物として紹介されたのは――。
「……カイル?」
なぜ、別れた恋人が侯爵家の従者に?
なぜエドガーは二人を引き離したのか?
冷たい夫が隠していた、本当の想いとは。
これは、愛されないはずだった侯爵夫人と、余命二年の侯爵、そして幼い養子と元恋人。
四人が家族になっていく、短くて温かな二年間の物語。