あらすじ
妹のミナは、ダンジョン配信者になるのが夢だった。
登録者はまだ少ない。
探索者としての実力も、決して高くない。
それでも夢を諦めない妹を、兄の神代蓮は裏方として支えていた。
機材を運ぶ。
カメラを調整する。
危険がないか確認する。
それだけ。
蓮自身も、目立つつもりなんてなかった。
かつて最上位探索者として名を馳せた過去も、今では隠している。
ところが、ミナの初めての本格的なダンジョン配信で事件が起きた。
妹を助けるため、蓮が動く。
そして――ほんの数秒だけ、配信画面に映り込んだ。
『今の誰?』
『……え? 動きおかしくない?』
『あの男、何者だよ』
たった数秒の映像は切り抜かれ、SNSへ。
動画は瞬く間に拡散され、掲示板では正体探しが始まり、プロの探索者までその動きを分析し始める。
やがて、一つの噂が広がっていく。
――あの男は、かつて伝説と呼ばれた最強探索者なのではないか。
一方その頃。
当の蓮は、何も知らずに妹の機材を運んでいた。
「……なんで俺がこんなことになってんだ?」
これは、妹の夢を応援していただけの兄が、うっかり配信に映ったことから始まる物語。
妹の登録者が増えるたび。
配信が盛り上がるたび。
謎の兄の正体に、世界が少しずつ近づいていく。