あらすじ
人の役に立つことでしか、自分の価値を見出せない少女・大園逢加(おおぞの・あいか)。
ある日、クラスに復学してきた笠原尚(かさはら・なお)は、後天性の難病によって視力のほとんどを失っていた。
彼の瞳は星空のようで、彼に見えるのは濃紺のノイズに沈んだ世界と、ぼんやりした人の輪郭だけ。
誰もが戸惑う中、逢加は「困っている人だから」と尚の補助を引き受ける。
それは彼女にとって、いつもの“親切”の延長にすぎなかった。
しかし尚は、逢加の声や足音、わずかな気配を驚くほど正確に感じ取り、まるで見えているかのように彼女を認識する。
暗闇の世界の中で、逢加だけが光を帯びているようだった。
尚に必要とされるたび、逢加の心は少しずつ満たされていく。
けれどその優しさは、やがて彼女自身を追い詰めていくことになる。
そして、尚の想いは逢加の妹・大園透佳(おおぞの・とうか)を巻き込みながら、三人の関係を静かに揺らしていく。
これは、
「誰かのために生きてしまう少女」と
「大切な人を見失うことを恐れる少年」の、
触れそうで触れられない距離を描く青春の物語。